2024年1月23日 (火) に,東京大学宇宙惑星科学機構 (UTOPS) の橘省吾教授が練馬区立中村小学校5年生のみなさんに,リュウグウや「はやぶさ2」のお話をしました.
1時間目から4時間目まで各クラスを回って授業し,元気いっぱいなお子さんたちと交流しました.
当日の様子は以下URL「宇宙のお話1」「宇宙のお話2」をご参照ください.
2024年1月23日 (火) に,東京大学宇宙惑星科学機構 (UTOPS) の橘省吾教授が練馬区立中村小学校5年生のみなさんに,リュウグウや「はやぶさ2」のお話をしました.
1時間目から4時間目まで各クラスを回って授業し,元気いっぱいなお子さんたちと交流しました.
当日の様子は以下URL「宇宙のお話1」「宇宙のお話2」をご参照ください.
共同プレスリリース
橘 省吾(宇宙惑星科学機構/地球惑星科学専攻 教授)
小惑星の表面は大気に覆われていないため、太陽風や宇宙の塵が降り注ぎ、小惑星最表面の物質の化学組成などの特徴を変化させます。東北大学大学院理学研究科地学専攻の松本恵助教と中村智樹教授ら、立命館大学、京都大学、東京大学などとの共同研究チームは、探査機はやぶさ2が小惑星リュウグウから持ち帰った岩石粒子の表面を走査型電子顕微鏡で観察し、小惑星表面に宇宙の小さな塵が衝突してできた大きさ5~20マイクロメートル程度の溶融物を複数発見しました。溶融物の3次元CT観察や化学組成分析を行った結果、溶融物は、衝突した彗星由来の塵とリュウグウの表面物質が高温で融けて混ざり合うことで生成したことが分かりました。
彗星は太陽系の遠方で形成され、生命の材料となり得る有機物を多く含むことが知られています。彗星塵の衝突による溶融物の形成は、現在から約500万年前の間に、現在の小惑星リュウグウの軌道上で起こった可能性が高く、リュウグウには、ごく最近まで、太陽系の遠方から有機物を含む彗星の塵が供給されていたと考えられます。
本研究の成果は、2024年1月19日に米国科学振興協会(AAAS)が発行する学術誌 Science Advances に掲載されました。
詳細については、以下をご参照ください。
理学系研究科web:https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/press/10185/
掲載URL:https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.adi7203
2024年1月20日(土)、21日(日)の2日間、長野県諏訪清陵高校,長野県諏訪二葉高校、長野県松本美須々ケ丘高校、岐阜県立恵那高校の生徒を対象に、天文学実習をおこないました。銀河の写真から、銀河までの距離を推定し、それらの銀河の後退速度を使って、宇宙の年齢を考えてもらいました。
共同プレスリリース
橘 省吾(宇宙惑星科学機構/地球惑星科学専攻 教授)
小惑星回収試料や隕石の反射スペクトルは、観測で得られる小惑星の反射スペクトルから小惑星の構成物質を特定するための手がかりとなります。
東北大学大学院理学研究科地学専攻の天野香菜大学院生(現、客員研究者)、中村智樹教授、国立研究開発法人 産業技術総合研究所の松岡萌研究員、東京大学大学院理学系研究科附属宇宙惑星科学機構・地球惑星科学専攻の橘省吾教授らの研究グループは、小惑星探査機はやぶさ2が小惑星リュウグウから回収した試料を地球大気と反応させないように工夫して反射スペクトルを測定しました。リュウグウ試料、リュウグウと同種の小惑星から飛来した隕石、および隕石を実験的に加熱した試料を比較し、隕石が地球大気の水や酸素と反応したことでその反射スペクトルが宇宙にあった状態よりも明るく変化したことを示しました。本成果を踏まえ、隕石の地上での変質によって反射スペクトルがどのように変化しうるかを考慮することで、観測によって小惑星の構成物質を特定する精度の向上が期待されます。
本成果は2023年12月7日に米国科学振興協会(AAAS)が発行する学術誌 Science Advancesに掲載されました。
詳細については、以下をご参照ください。
共同プレスリリース
瀧川 晶(地球惑星科学専攻 准教授)
橘 省吾(宇宙惑星科学機構/地球惑星科学専攻 教授)
太陽から遠く離れた場所で生まれた氷天体や彗星にはアンモニウム塩のような窒素化合物が大量に貯蔵されています。このような窒素を含む固体は生命の材料物質としてとても重要だと考えられていますが、地球軌道の地域に輸送される証拠は見つかっていませんでした。本研究では、地球の近くに軌道をもつ小惑星リュウグウの砂を電子顕微鏡で調べ、砂のごく表面が窒化した鉄(窒化鉄:Fe4N)に覆われていることを発見しました。窒化鉄は、磁鉄鉱と呼ばれる鉄原子と酸素原子の鉱物の表面で見られます。我々は、氷天体からやってきたアンモニア化合物を大量に含む微小な隕石がリュウグウに衝突して、磁鉄鉱の表面で化学反応が起こり、この窒化鉄が形成したと考えました。小惑星の表層では、太陽から吹くイオンの風(太陽風)の照射などによって磁鉄鉱の表面から酸素が失われていて、アンモニアと反応しやすい金属鉄がごく表面に形成しています。このため、磁鉄鉱の表面ではアンモニアに由来する窒化鉄の合成が促されたと推測しています。この微小隕石は太陽系遠方の氷天体からやってきたかもしれず、これまで気づかれてきたよりも多くの量の窒素化合物が太陽系の地球付近に輸送されて、生命の材料となった可能性があります。
本成果は、京都大学白眉センターの松本徹 特定助教、理学研究科の野口高明教授、三宅亮准教授、伊神洋平助教、化学研究所の治田充貴准教授、および国際的な共同研究者のグループによって行われ、2023年11月30日に英国の国際学術誌「Nature Astronomy」にオンライン掲載されました。
本研究成果には、地球惑星科学専攻の 橘省吾教授、瀧川晶准教授が参加しています。
詳細については、以下をご参照ください。
東京工業大学 理学院 地球惑星科学系の横山哲也教授、東京大学 大学院理学系研究科の飯塚毅准教授と橘省吾教授、北海道大学 大学院理学研究院の圦本尚義教授らの研究グループは、Cb型小惑星「リュウグウ」の同位体組成を測定し、リュウグウで生じた激しい水質変成と水循環により、クロム同位体組成の局所的な不均質が生じたことを突き止めました。
リュウグウ試料の初期分析により、Cb型小惑星「リュウグウ」はイヴナ型炭素質隕石に似た化学組成や鉱物組成を持つことが明らかとなったが、クロムの核合成起源同位体異常については、リュウグウとイヴナ型炭素質隕石の間にわずかなズレが見られており、その原因究明が待たれていました。
研究グループは、計5つのリュウグウ試料を対象に、クロム(54Cr)とチタン(50Ti)の核合成起源同位体異常を測定しました。その結果、54Cr同位体異常はイヴナ型隕石の平均値より高い値から低い値まで、有意な変動が見られました。この変動は、短寿命核種であるマンガン-53(53Mn)の放射壊変に由来するクロム同位体(53Cr)の変動と逆相関することから、リュウグウ起源天体で生じた水質変成・水循環により54Crが乏しい箇所と、Mnに富む炭酸塩(53Crに富む)箇所が生じたと考えられます。また、各々のリュウグウ試料(7~24 mg)を合算した物質(約90 mg)の54Cr同位体異常は、イヴナ型炭素質隕石の平均値と一致しました。すなわち、本来の同位体組成を正しく知るには、一定の均質試料の分析が必要といえます。OSIRIS-RExが持ち帰った小惑星ベヌー試料の初期分析においても、不均質の影響を避けるために、一定量(0.1 g以上)の試料を用いた分析が望ましいことが判明しました。
本研究成果は、日本時間2023年11月9日に、Science Advances誌にオンライン掲載されました。
詳細については、以下をご参照ください。
共同プレスリリース
河野 孝太郎(天文学教育研究センター 教授)
国立天文台の泉拓磨助教を中心とする国際研究チームは、アルマ望遠鏡を用いて、近傍宇宙にあるコンパス座銀河を約1光年という非常に高い解像度で観測し、超巨大ブラックホール周辺わずか数光年の空間スケールでのガス流とその構造を、プラズマ・原子・分子の全ての相において定量的に測定することに世界で初めて成功しました。その結果、超巨大ブラックホールへ向かう降着流を明確にとらえ、降着流が「重力不安定」と呼ばれる物理機構により生じていることをも明らかにしました。さらに、降着流の大半はブラックホールの成長には使われず、原子ガスか分子ガスとして一度ブラックホール付近から噴き出た後に、ガス円盤に舞い戻って再びブラックホールへの降着流と化す、あたかも噴水のようなガスの循環が起きていることも分かりました。超巨大ブラックホールの成長メカニズムの包括的な理解に向けた重要な成果です。
これらの観測成果は、Izumi et al. “Supermassive black hole feeding and feedback observed on sub-parsec scales”として米国学術雑誌 Science に2023年11月3日付で掲載 (DOI: 10.1126/science.adf0569) されました。
なお、本研究は、天文学教育研究センターの河野孝太郎教授が参加しています。
詳しくは、国立天文台 、国立天文台アルマプロジェクト のホームページをご覧ください。
国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学宇宙地球環境研究所のリン キスラー 教授(兼:米国ニューハンプシャー大学教授)、三好 由純 教授、堀 智昭 特任准教授らは、宇宙航空研究開発機構の浅村 和史 准教授、篠原 育 教授、東京大学大学院理学系研究科の笠原 慧 准教授、桂華 邦裕 助教、大阪大学の横田 勝一郎 准教授、及び米国研究者との国際共同研究で、宇宙嵐を引き起こしているのは、従来考えられてきた太陽起源のプラズマよりも、地球起源のプラズマが主要因であることを発見しました。
研究チームは、国際協力によって、日本のジオスペース探査衛星「あらせ」、米国 NASAや欧州ESAの合計4機の科学衛星のデータを用いて解析しました。その結果、地球近傍の宇宙空間(ジオスペース)で、太陽と地球起源のプラズマの組成を分離することに初めて成功し、宇宙嵐時に、地球磁気圏のプラズマが太陽起源から地球起源へと変化することを発見しました。また、宇宙嵐の発達において、はじめは地球起源の水素イオンが支配的であり、その後、地球起源の酸素イオンが宇宙嵐の主要因となることも同定しました。
これは、従来考えられてきた太陽起源のイオンだけでなく、地球起源のイオンも、宇宙嵐の発達に影響を与えることを示しています。宇宙嵐のときには地球周辺の宇宙環境が大きく変化し、人工衛星に障害が生じたり、地上で強い電流が流れたりして送電網に影響が及ぶことがあります。本研究は、宇宙嵐による宇宙環境の変化を理解したり、宇宙嵐を予測したりするためには、太陽からのプラズマだけではなく、地球からのプラズマの挙動を正確に理解する必要があることを示しており、これまでの宇宙嵐の理解に大きな変革を迫るものです。
本研究成果は、2023年10月30日午後7時(日本時間)付イギリス科学誌「Nature Communications」に掲載されました。
詳細については、以下をご参照ください。