【プレスリリース】リュウグウは太陽系の果てからやってきた ~リュウグウが持つ原子核合成の記録がリュウグウの誕生地を示唆~

共同プレスリリース
橘 省吾(宇宙惑星科学機構 教授/JAXA宇宙科学研究所 特任教授)
飯塚 毅(地球惑星科学専攻 准教授)

北海道大学大学院理学研究院の圦本尚義教授、東京工業大学理学院地球惑星科学系の横山哲也教授、東京大学大学院理学系研究科の橘 省吾教授らの研究グループは、Cb型小惑星「リュウグウ」とイヴナ型炭素質隕石の類似性を明らかにし、「リュウグウ」とイヴナ型炭素質隕石は天王星・海王星領域で生まれた可能性が非常に高いことを明らかにしました。

これまでの研究から、Cb型小惑星「リュウグウ」はイヴナ型炭素質隕石と同様の物質からできていることが判明しています。イヴナ型炭素質隕石は、隕石の中で最も揮発性元素に富んでいる種類であり、太陽の元素存在度比に最も近い組成を持つ隕石です。ただ、太陽系誕生当時も冷たい環境であったと考えられている小惑星帯の外側領域は、全て揮発性元素に富むリュウグウやイヴナ型炭素質隕石の誕生地の候補になると考えられており、化学的に類似していると言っても、リュウグウがどこで生まれたのかという疑問に対する決定打とはなりませんでした。

研究チームは、鉄の同位体組成を測定し、リュウグウとイヴナ型炭素質隕石の分析値に違いがないことを明らかにしました。リュウグウとイヴナ型炭素質隕石の鉄の同位体組成は他の炭素質隕石と明らかに異なっており、鉄とチタンの同位体比をプロットすると、新しい隙間が現れました。これは、リュウグウとイヴナ型炭素質隕石が他の隕石とは全く異なる場所で生まれたことを示唆しています。

揮発性元素に富んでいる惑星は木星以遠で生まれます。リュウグウとイヴナ型炭素質隕石のようなCb型小惑星は、太陽系の外れにある天王星や海王星領域で生まれ、天王星・海王星の重力共鳴作用により小惑星帯に移動し、その後、壊された破片が地球にやってきたものがイヴナ型炭素質隕石であると考えられます。

https://www.hokudai.ac.jp/news/2022/10/post-1110.html

詳細については、以下をご参照ください。

図:本論文が考えるイヴナ型炭素質隕石(CI)、炭素質隕石(CC)、非炭素質隕石(NC)が生まれた場所を示す模式図。揮発性物質に富み、鉄とチタンの同位体で独自のグループをつくるリュウグウやイヴナ型炭素質隕石は、他の炭素質隕石よりさらに遠くの天王星・海王星領域で生まれたと考えられる(©Hopp et al., 2022より)。

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【プレスリリース】「はやぶさ2」サンプル収納コンテナの外に小惑星リュウグウ粒子を発見!

共同プレスリリース
橘 省吾教授、稲田 栞里(地球惑星環境学科4年)、吉田 英人特任専門職員

小惑星探査機「はやぶさ2」が持ち帰った小惑星リュウグウのサンプルはミッションの成功基準 0.1グラムを大きく上回る、およそ5グラムでした。東京大学大学院理学系研究科の橘教授ら「はやぶさ2」サンプラーチーム、宇宙科学研究所地球外物質分析グループを中心とする研究グループは、2020年12月にサンプルが収納されていたコンテナ(サンプル収納コンテナ)を開封する直前に、コンテナの蓋とコンテナ本体の間の隙間に発見された黒色の2粒子の組織観察や構成鉱物の元素分析をおこない、これらの粒子が小惑星リュウグウ由来であることを明らかにしました。地上ですでに発見されているリュウグウに類似した隕石ではないことも確認されました。これらの粒子は「はやぶさ2」がサンプル収納コンテナを密封する前に、宇宙空間で外に飛び出し、コンテナ蓋とコンテナ本体の間に挟まれたまま、地上に帰還した粒子であると考えられます。これらの粒子の存在は、コンテナの密封性能に影響を与える可能性もあり、今後のサンプルリターンミッションにおけるサンプル収納機構の設計にも活かすことのできる新しい知見です。

https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/info/8113/

詳細については、以下をご参照ください。

図1:発見されたQ粒子(左)とコンテナ外部への混入のイメージ図(右)

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【プレスリリース】小惑星リュウグウ試料の希ガスおよび窒素同位体組成―リュウグウ揮発性物質の起源と表層物質進化―

共同プレスリリース
橘 省吾教授、狩野 彰宏教授、杉田 精司教授、諸田 智克准教授

小惑星探査機「はやぶさ2」が地球に持ち帰った近地球軌道小惑星リュウグウの表層および地下物質試料の希ガスと窒素の同位体組成を測定しました。リュウグウには太陽系形成時の希ガスがふくまれており、その量はこれまで報告されているどの隕石よりも多いことがわかりました。窒素同位体組成は試料ごとに異なっており、多様な窒素含有物質が今もリュウグウ試料には保存されていることがわかりました。太陽系形成時の始原的ガス以外にも、銀河宇宙線によって生成された希ガスと太陽風起源の2種類の希ガスも含まれていました。多くのリュウグウ試料に含まれる太陽風起源ガスは僅かな量でした。第1回タッチダウン回収試料を10個、第2回タッチダウン回収試料を6個分析しましたが、多くの試料は太陽風希ガスをあまり含んでおらず、2試料だけが現在の軌道でそれぞれ3500年間、250年間の照射に相当する太陽風を含んでいました。太陽風は天体の最表層の物質にしか打ち込まれないため、これらの試料は天体最表層にそれぞれ3500年間、250年間、存在していたことを意味しています。第2回タッチダウン試料は人工クレーター付近から回収しており、地下物質を含んでいると期待されています。第2回タッチダウン試料には太陽風希ガスがあまり含まれていないことから、深さ1-2m程度の地下物質はあまり撹拌されていないことがわかりました。また、銀河宇宙線起源ネオン量から、リュウグウ試料の銀河宇宙線照射期間は約500万年であることがわかりました。リュウグウ表面のクレーターには、近地球軌道での衝突で作られたと仮定して計算される年代(200万年から800万年)と、小惑星帯での頻繁な衝突で作られたと仮定して計算される年代(10万年から30万年)が提案されてきました。希ガス分析の結果から得られた銀河宇宙線照射期間は前者の年代に一致しており、リュウグウは約500万年前に小惑星軌道から、天体表層への隕石衝突が少ない近地球軌道に移動したと考えられます。

https://www.jaxa.jp/press/2022/10/20221021-1_j.html

詳細については、以下をご参照ください。

図:リュウグウの進化図。1.リュウグウ母天体の形成と先太陽および始原的ガスの獲得。2.リュウグウ母天体での水質変質(約45.6億年前)。3.母天体破片の集積によるリュウグウ形成。4.近地球軌道への移動(約500万年前)。5.加熱による赤化(約100万年以上前)。6.現在のリュウグウ。

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【プレスリリース】「はやぶさ2」ミッションによる世界初の小惑星からのガスサンプル:リュウグウからのたまて箱

共同プレスリリース
橘 省吾教授、狩野 彰宏教授、杉田 精司教授、諸田 智克准教授

小惑星探査機「はやぶさ2」が地球に持ち帰ったサンプルコンテナ内のガス成分の質量分析およびガス採取を行いました。カプセル回収から30時間後に、オーストラリア現地でガス採取・分析装置(GAEA)を用いてコンテナ内のガス成分の抽出・採取・質量分析を行いました。その後、採取したガスを国内外の研究機関に配布し、ガス成分の精密な同位体分析を行いました。その結果、コンテナガスは太陽風と地球大気の混合であることが判明しました。コンテナ内のヘリウム量から計算したところ、リュウグウ試料の表面が剥離した際に遊離した太陽風がコンテナガスとして含まれている可能性が最も高いことがわかりました。近地球軌道小惑星からガス成分を気体のまま地球に持ち帰ったのは、「はやぶさ2」ミッションが世界で初めてです。

https://www.jaxa.jp/press/2022/10/20221021-2_j.html

詳細については、以下をご参照ください。

図:GAEA搭載の質量分析装置によるコンテナガスの質量分析結果(青色実線)。 横軸は質量(m)とイオン価数(z)の比(m/z)、縦軸はm/zに相当するイオンの質量分析装置での電気信号強度(任意スケール)。装置由来のガス(灰色点線)や地球大気標準ガス(赤丸)とくらべてm/zが4のガス(ヘリウム)が過剰に存在する。

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