【プレスリリース】
リュウグウの岩石試料が始原的な隕石より黒いわけ
―地球に飛来した隕石は大気と反応し「上書き保存」されて明るく変化した―

共同プレスリリース
橘 省吾(宇宙惑星科学機構/地球惑星科学専攻 教授)

小惑星回収試料や隕石の反射スペクトルは、観測で得られる小惑星の反射スペクトルから小惑星の構成物質を特定するための手がかりとなります。

東北大学大学院理学研究科地学専攻の天野香菜大学院生(現、客員研究者)、中村智樹教授、国立研究開発法人 産業技術総合研究所の松岡萌研究員、東京大学大学院理学系研究科附属宇宙惑星科学機構・地球惑星科学専攻の橘省吾教授らの研究グループは、小惑星探査機はやぶさ2が小惑星リュウグウから回収した試料を地球大気と反応させないように工夫して反射スペクトルを測定しました。リュウグウ試料、リュウグウと同種の小惑星から飛来した隕石、および隕石を実験的に加熱した試料を比較し、隕石が地球大気の水や酸素と反応したことでその反射スペクトルが宇宙にあった状態よりも明るく変化したことを示しました。本成果を踏まえ、隕石の地上での変質によって反射スペクトルがどのように変化しうるかを考慮することで、観測によって小惑星の構成物質を特定する精度の向上が期待されます。

本成果は2023年12月7日に米国科学振興協会(AAAS)が発行する学術誌 Science Advancesに掲載されました。

図:リュウグウ試料(グラフ中の青線)、加熱していないCIタイプ隕石(黒の点線)、300度で加熱したCIタイプ隕石(赤線)の反射スペクトル。

詳細については、以下をご参照ください。

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【プレスリリース】
小惑星リュウグウでみつかった窒化した鉄の鉱物
―太陽系の遠方から辿り着いた窒素に富む塵―

共同プレスリリース
瀧川 晶(地球惑星科学専攻 准教授)
橘 省吾(宇宙惑星科学機構/地球惑星科学専攻 教授)

太陽から遠く離れた場所で生まれた氷天体や彗星にはアンモニウム塩のような窒素化合物が大量に貯蔵されています。このような窒素を含む固体は生命の材料物質としてとても重要だと考えられていますが、地球軌道の地域に輸送される証拠は見つかっていませんでした。本研究では、地球の近くに軌道をもつ小惑星リュウグウの砂を電子顕微鏡で調べ、砂のごく表面が窒化した鉄(窒化鉄:Fe4N)に覆われていることを発見しました。窒化鉄は、磁鉄鉱と呼ばれる鉄原子と酸素原子の鉱物の表面で見られます。我々は、氷天体からやってきたアンモニア化合物を大量に含む微小な隕石がリュウグウに衝突して、磁鉄鉱の表面で化学反応が起こり、この窒化鉄が形成したと考えました。小惑星の表層では、太陽から吹くイオンの風(太陽風)の照射などによって磁鉄鉱の表面から酸素が失われていて、アンモニアと反応しやすい金属鉄がごく表面に形成しています。このため、磁鉄鉱の表面ではアンモニアに由来する窒化鉄の合成が促されたと推測しています。この微小隕石は太陽系遠方の氷天体からやってきたかもしれず、これまで気づかれてきたよりも多くの量の窒素化合物が太陽系の地球付近に輸送されて、生命の材料となった可能性があります。

本成果は、京都大学白眉センターの松本徹 特定助教、理学研究科の野口高明教授、三宅亮准教授、伊神洋平助教、化学研究所の治田充貴准教授、および国際的な共同研究者のグループによって行われ、2023年11月30日に英国の国際学術誌「Nature Astronomy」にオンライン掲載されました。

本研究成果には、地球惑星科学専攻の 橘省吾教授、瀧川晶准教授が参加しています。

(A) 小惑星リュウグウの試料に含まれる磁鉄鉱粒子。(B)丸い磁鉄鉱の断面画像。

詳細については、以下をご参照ください。

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