共同プレスリリース
田村 元秀(天文学専攻 教授)
これまで5000個を超える太陽系外惑星(以下、系外惑星)が発見されてきていますが、そのほとんどは間接的な観測によるもので、系外惑星からの光を直接に画像としてとらえる直接撮像がなされたものは20例ほどしかありません。これまでの直接撮像による系外惑星探査は、観測対象を絞りこむことができず、多数の天体を観測してやみくもに探すという手法で行われていたためです。
しかし、恒星の天球上での位置を精密に測定することができる衛星の登場がこの状況を打開します。欧州宇宙機関が打ち上げたガイア衛星と先任のヒッパルコス衛星による精密なアストロメトリ(位置天文学)のデータを利用して、惑星が存在する間接証拠を恒星の位置のふらつき(加速運動)から先に得ておき、有望天体のみを大望遠鏡と超補償光学を用いて直接撮像する手法が可能になったのです。
今回、東京大学理学系研究科の研究者を中心とする国際研究チームは、すばる望遠鏡に搭載された超補償光学装置とこの手法に基づき、新たな系外惑星HIP 99770 bの直接撮像による発見に成功しました(図1および図2)参照。はくちょう座の方向130光年の距離にある、見かけの明るさが4等級と肉眼でも見える恒星HIP 99770を、太陽-地球間の距離の17倍離れて周回する系外惑星です。恒星のふらつきのデータを加味することで、この系外惑星の質量は木星の質量の15±1倍であると推定されました、直接撮像で見つかった系外惑星としては、これまでより格段に精密な推定になります。
この手法で発見される惑星は、今後の地上の超巨大望遠鏡による高コントラスト観測を実証する上で最適です。また将来、地球の双子を写すための技術としても有望で、今後の発展が期待されます。
この研究成果は、Currie et al. “Direct Imaging and Astrometric Detection of a Gas Giant Planet Orbiting an Accelerating Star” として、米国の科学雑誌『サイエンス』に2023年4月13日付で掲載されました。
なお、本研究成果には、天文学専攻の田村元秀教授が参加しています。
詳しくは、国立天文台ハワイ観測所 および、国立天文台 のホームページをご覧ください。また、アストロバイオロジーセンターでもご紹介しています。