共同プレスリリース
橘 省吾教授、杉田 精司教授、諸田 智克准教授、長 勇一郎助教、湯本 航生(博士課程1年)
リターンサンプルの分析は地質情報が存在することで、隕石などの分析とは一線を画します。しかし、小惑星の一部の地域から持ち帰られた試料から、小惑星の全体像の理解につながる貴重な情報が得られることを期待していいのでしょうか?このような懸念に対し、チームではすべての情報を駆使した解析を実行することを決断していました。そのために、大きさ1キロメートルのリュウグウ全体の観測、ローバーでの表面多地点観察、着地運用時のセンチメートル、ミリメートルサイズ粒子の観察、リターンサンプルの観察といったさまざまな長さスケール(マルチスケール)でおこなう観察や分析は、探査機データとサンプル分析をシームレスにつなぐものとして、「はやぶさ2」探査では重点的におこなわれてきました。今回、リュウグウ表面粒子のCAM-Hによる観察やMINERVA-II1ローバーによる多地点での観察と、クリーンチャンバー内のリターンサンプルの観察といったマルチスケール観測の結果をあわせて、リターンサンプルがリュウグウを代表する粒子であること、リュウグウ表面には平板状粒子が存在し、それらが持ち帰られたことが示されました。また、サンプラーシステムが正常に作動し、5 gのサンプルが持ち帰られたことも確認されました。
持ち帰えられた粒子のサンプルは、現在、原子レベルまでの分析が進んでいます。さまざまなスケール(マルチスケール)で得られる結果を総合して、数十億キロメートル・46億年というさらに大きな時空間スケールの太陽系の歴史を紐解きたいというミッションです。特に、サンプルリターン探査で持ち帰られるサンプルは、探査機が対象天体の素性を明らかにして、地質情報とともに回収されるという点で、地上で回収され、その起源がはっきりしない地球外物質とは一線を画し、本ミッションによって初めて、C型小惑星がどういう元素や物質でできているのかが明らかになることが期待されます。
https://www.isas.jaxa.jp/topics/002942.html
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