高校生を対象とした天文学実習を開催しました

2023年8月1日(火)、2日(水)の2日間、長野県松本深志高校,愛知県立刈谷高校の生徒を対象に、天文学実習をおこないました。銀河の写真から、銀河までの距離を推定し、それらの銀河の後退速度を使って、宇宙の年齢を考えてもらいました。

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【募集】8/23,8/24 小中高校の教員を対象としたイベント 開催します

主に小中高校の教員を対象に、東京大学宇宙惑星科学機構(UTOPS)で展開されている最先端の研究を紹介するために、イベントを開催いたします。

今回は、UTOPSの研究活動の中から、「はやぶさ2」の小惑星サンプルリターンに関する研究についてお話します。小惑星から持ち帰ったサンプルを通じて研究者は何を解き明かそうとしているのか、そして何がわかったのか、その詳しい研究方法と裏側をご紹介します。講師からの発表後には、大学以外の教育機関との協力や連携の方法などについて、参加者の皆様と意見交換を行えればと考えています。講演や意見交換を通じて、今後の学校での授業でご活用いただけるような”材料をお持ち帰り”いただければと思います。

開催日とテーマ

2つのテーマで実施します。どちらか1回のご参加でも、両日のご参加でも構いません。

● 2023年8月23日(水) 13:30-15:00 小中高生に伝えたい「はやぶさ2」

● 2023年8月24日(木) 13:30-15:00 小中高生に伝えたい「地球や惑星の科学」

開催形式:オンライン(ZOOM)

対象:小中高校の教員、教育関係者等(理科教員でなくても構いません)

プログラム

 ・挨拶

 ・講演(橘省吾 教授)

 ・質疑応答、意見交換など

参加方法:事前登録制

    専用申込フォーム:https://forms.gle/zLv6iPYufDr4qa9c7

      ※開催日の2日程前にイベント参加用の接続情報をお送りする予定です。

問い合わせutops_event-group@g.ecc.u-tokyo.ac.jp

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【プレスリリース】リュウグウの炭酸塩から酸素濃度・ガス分子種の変遷を解読 〜炭素・酸素同位体比に基づく天体進化モデルを構築 形成・変質過程の手がかりに〜

共同プレスリリース
橘 省吾(地球惑星科学専攻 教授)

茨城大学大学院理工学研究科(理学野)の藤谷渉准教授、北海道大学大学院理学研究院の川﨑教行准教授および圦本尚義教授、東京工業大学理学院地球惑星科学系の横山哲也教授、東京大学大学院理学系研究科の橘省吾教授らの研究チームは、探査機はやぶさ2が回収した小惑星リュウグウの試料を分析し、リュウグウにおける酸素濃度や存在するガス分子種の変遷を明らかにしました。

本研究では、リュウグウの試料における炭酸塩鉱物(方解石および苦灰石)に含まれる炭素と酸素の同位体の存在量比を調べました。すると、方解石では炭素・酸素どちらの同位体比も異なる粒子の間で大きな変動がある一方、苦灰石ではほとんど変動は見られませんでした。この分析結果は、方解石はリュウグウにおける変質作用の初期、温度や酸素濃度が上昇中、ガス分子種の割合が変化しているときに形成され、一方、苦灰石は系が平衡状態にあり、より高温で、ガスの中で二酸化炭素の割合が相対的に高い状態で形成されたことを示唆します。

こうした炭酸塩鉱物の同位体組成は、これまでの隕石研究では報告されていませんでした。このことから、リュウグウや隕石の母天体はそれぞれ異なる物質から構成され、独特の環境で進化したと言えます。

この成果は、2023年7月10日(水)Nature Geoscienceにオンライン掲載されました。

https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/info/8544/

詳細については、以下をご参照ください

リュウグウ試料およびイヴナ隕石中の方解石、苦灰石の炭素・酸素同位体比。方解石は苦灰石に比べて大きな変動を示す。水-岩石反応、温度上昇、酸素フガシティ上昇に伴う同位体比の変化は矢印で模式的に示す。

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【プレスリリース】
地球の大気の揺らぎを極限まで補正して太陽系外惑星を直接に撮像

共同プレスリリース
田村 元秀(天文学専攻 教授)

これまで5000個を超える太陽系外惑星(以下、系外惑星)が発見されてきていますが、そのほとんどは間接的な観測によるもので、系外惑星からの光を直接に画像としてとらえる直接撮像がなされたものは20例ほどしかありません。これまでの直接撮像による系外惑星探査は、観測対象を絞りこむことができず、多数の天体を観測してやみくもに探すという手法で行われていたためです。

しかし、恒星の天球上での位置を精密に測定することができる衛星の登場がこの状況を打開します。欧州宇宙機関が打ち上げたガイア衛星と先任のヒッパルコス衛星による精密なアストロメトリ(位置天文学)のデータを利用して、惑星が存在する間接証拠を恒星の位置のふらつき(加速運動)から先に得ておき、有望天体のみを大望遠鏡と超補償光学を用いて直接撮像する手法が可能になったのです。

今回、東京大学理学系研究科の研究者を中心とする国際研究チームは、すばる望遠鏡に搭載された超補償光学装置とこの手法に基づき、新たな系外惑星HIP 99770 bの直接撮像による発見に成功しました(図1および図2)参照。はくちょう座の方向130光年の距離にある、見かけの明るさが4等級と肉眼でも見える恒星HIP 99770を、太陽-地球間の距離の17倍離れて周回する系外惑星です。恒星のふらつきのデータを加味することで、この系外惑星の質量は木星の質量の15±1倍であると推定されました、直接撮像で見つかった系外惑星としては、これまでより格段に精密な推定になります。

この手法で発見される惑星は、今後の地上の超巨大望遠鏡による高コントラスト観測を実証する上で最適です。また将来、地球の双子を写すための技術としても有望で、今後の発展が期待されます。

図1:すばる望遠鏡で発見されたHIP 99770の惑星の画像。木星の約15倍の質量を持つ巨大惑星です。黄色の星印の位置にある主星からの明るい光の影響は除去されています。白い矢印が示している天体が新たに直接観測により発見された惑星です。比較のため、黄色の破線は木星の軌道の大きさを示しています。(クレジット:T. Currie/Subaru Telescope, UTSA)
図2:2020年から2021年にかけてすばる望遠鏡で撮像された系外惑星HIP 99770 bのムービー(クレジット:T. Currie/Subaru Telescope, UTSA)。惑星の公転運動が見える。

この研究成果は、Currie et al. “Direct Imaging and Astrometric Detection of a Gas Giant Planet Orbiting an Accelerating Star” として、米国の科学雑誌『サイエンス』に2023年4月13日付で掲載されました。

なお、本研究成果には、天文学専攻の田村元秀教授が参加しています。

詳しくは、国立天文台ハワイ観測所 および、国立天文台 のホームページをご覧ください。また、アストロバイオロジーセンターでもご紹介しています。

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地球の大気の揺らぎを極限まで補正して太陽系外惑星を直接に撮像 は
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【プレスリリース】
太陽系の外から降り注ぐ微粒子に生命の痕跡を探す
―地球外生命の新たな探査法―

プレスリリース
戸谷 友則(天文学専攻 教授)

発表のポイント

  • 太陽系の外から地球に降り注ぐ1ミクロンサイズの微粒子を捕らえることで、太陽系外の生命の探査が可能であることを示しました。
  • 太陽系外で生まれた原始的な生命の痕跡を直接的なサンプルとして取得することができるという、新しくユニークな地球外生命の探査法になります
  • 我々の住む銀河系において、生命が生まれる惑星がどれくらいあるのかを探ることができます。将来、これを実現するための技術の検討が望まれます。

発表概要

東京大学大学院理学系研究科の戸谷友則教授は、太陽系外で生まれた生命を探索する新しい方法を提案しました。太陽系外の恒星のまわりの惑星系において、生命が存在する惑星に小惑星が衝突し、惑星表面の岩石が細かな粒子として宇宙空間に放出されます。それが惑星系を飛び出し、星間空間(注1)を旅して、一部は最終的に太陽系の地球までやってきます。今回の研究で、そのような微粒子が年間約10万個も地球に降り注いでいると見積もられました。将来、この微粒子を捕らえることで、太陽系からはるかに遠い惑星系で生まれた生命の痕跡を、我々が直接手にすることができるかもしれません。そして、銀河系の数多くの恒星の中で、生命が生まれる惑星を持つものがどれくらいあるのか、という問いに答が得られるかもしれません。今後は、このような探査を将来に実現するための技術的な検討が望まれます。

発表内容

〈研究の背景〉
地球外に生命は存在するのか。科学の枠を超えて、人類にとって究極の問いかけの一つと言えるでしょう。現在、地球外生命の探査はいくつかのアプローチで行われています。一つは、太陽系内の惑星や衛星に探査機を送り、生命やその痕跡を探すというものです。しかし、太陽系内に地球外生命がいるという保証はありません。もしいなければ、太陽とは別の恒星の惑星系における生命を探すしかありません。天文学では、太陽に近い恒星を公転する太陽系外惑星を観測し、大気中の酸素などの生命痕跡(バイオシグネチャー)を探すという手法も、次世代の宇宙望遠鏡で可能となるかもしれません。しかしこの手法では、誰も疑いのない形で太陽系外生命の存在を証明するのは難しいとされています。現地に行くことのない、遠方からの間接的な観測だけでは、生命の痕跡と思われるものが本当に生命に起因するのか、あるいは非生物的に生成されたのか、判断が難しいのです。もう一つがSETIと呼ばれる地球外文明が発する電波信号の探査です。もしそのような信号を捉えれば確実な証明となるかもしれませんが、原始的な生命から文明にまで進化する確率は極めて低いかもしれません。原始的な太陽系外生命を探索する新しい手法が望まれます。

〈研究の内容〉
今回の研究では、太陽系外の地球型惑星に巨大隕石が衝突し、その際に様々なサイズの岩石や粒子が宇宙空間に放り出されることに注目しました。このようなことが頻繁に起きていることは確実で、実際、地球で採取された隕石の中には火星からやってきたものがあり、これらも火星に小惑星が衝突した際に放り出されて、最終的に地球に落下したと考えられています。約6600万年前に地球に小惑星が衝突し恐竜が絶滅した際にも、地球からそのような岩石や粒子が大量に宇宙にばらまかれたはずです。こうした岩石に生きた生命が乗って、惑星間、あるいは恒星間を旅するという可能性は、生命の起源を宇宙に求めるパンスペルミア説としてこれまでも議論されてきました。しかし、生きた生命を宇宙空間の宇宙線や放射から守るためには比較的大きい岩石(約1キログラム以上)が必要です。太陽系内の移動ならばともかく、そんな岩石が星間空間を超えて、他の恒星の惑星系に生きた生命と共に到着する可能性は、極めて低いと考えられています。

今回の研究の着想は、「生きた生命ではなく、生命の痕跡で良いのなら、もっと小さな粒子で構わない。そうした粒子は数においてははるかに多いから、地球までやってくる粒子数も多いのではないか?」というものでした。この目的のためには、1ミクロン(千分の一ミリメートル)程度のサイズの粒子が有望です。微生物の死骸や化石が含まれうる大きさであり、また、このような小さな粒子は太陽の放射による圧力が重力と同じ程度なので、容易に惑星系を脱出して星間空間に飛び出します。

今回の研究では、銀河系の中の多数の恒星に付随する地球型惑星から微粒子が脱出し、星間空間での移動や損失、そして最終的に太陽系の地球に到達するまでの様々なプロセスを吟味し、そのような粒子の数の見積りを初めてはじき出しました。

その結果は、年間10万個が地球に降り注いでいるというものです。もし、銀河系に存在する惑星の多くで生命が誕生し、地球のように表面が生命で満ち溢れた惑星が普通に存在するならば、これらの粒子の中に太陽系外微生物の化石や、生物に由来する岩石や鉱物(石灰岩が例として挙げられます)が含まれているはずです。このように小さなサイズの粒子は、地球の大気圏に突入してもすぐに減速され、さほど高温にならずに地上に降ってくると考えられています。太陽系外の生命の痕跡が刻まれた粒子が、日々、我々の頭上から近くの地面に落ちてきているかもしれないのです。もし、これらの粒子を集めることができれば、銀河系の中に生命を宿す星がどれだけあるのか?という問いに迫ることができます。

キャプション:太陽系外の惑星系から生命痕跡を含んだ微粒子が放出され、地球に到達するまでの概念図
なお、この図では以下のクレジットの画像を使用しております。
Image credit: NASA/Don Davis (隕石衝突の想像図), NASA, ESA and G. Gilmore (University of Cambridge); Processing: Gladys Kober (NASA/Catholic University of America)(背景の宇宙画像)

〈今後の展望〉
実際にこうした粒子を捕らえることは決して容易ではなく、まだ様々な検討が必要です。何より難しいのは、膨大な数の粒子からこれらの粒子を選り分けることです。太陽系の惑星間空間(注1)には惑星間塵(注2)と呼ばれる微粒子が常に漂っており、年間数万トンという量で地球に降り注いでいます。その中から、太陽系外に起源を持つ粒子を探し出すのは、砂漠に落ちた砂粒を探すようなものです。しかし年間10万個という個数は、我々が将来、太陽系外の生命痕跡の直接的なサンプルを得られるという極めて貴重な可能性を示唆しています。

こうした粒子を捕らえる方法も様々に考えられます。一番直接的な方法は、宇宙空間に検出器を多数並べて直接捕らえることです。実際、星間空間を漂っていた星間塵(注2)の粒子が太陽系に入り込んできたと思われるものが、人工衛星で検出されています。粒子の軌道を調べれば、太陽系外から来たかどうかを判別することも可能です。また、地球に落ちてきた惑星間塵は南極の氷や深海底に堆積した粘土からも検出されています。それらの中に太陽系外からの粒子を探す可能性もあるかもしれません。

約100年前、アインシュタインが重力波(注3)の存在を予言したとき、それを実際に検出できるとは当時の誰も考えませんでした。現在人類は、10億光年の遠方で起きたブラックホールの合体によって、4 kmの検出器の長さがわずかに陽子の一千分の一だけ縮んだことを検出しています。まずは、そうしたものが存在していると認識するところからすべては始まります。将来の科学のさらなる発展に期待したいものです。

論文情報

雑誌名International Journal of Astrobiology
論文タイトルSolid grains ejected from terrestrial exoplanets as a probe of the abundance of life in the Milky Way
著者Tomonori TOTANI
DOI番号 

用語解説

注1  惑星間空間・星間空間

太陽系の中で、惑星と惑星の間の宇宙空間を惑星間空間と呼びます。また銀河系の中で、恒星と恒星の間にある極めて密度の低い宇宙空間を星間空間と呼びます。

注2  惑星間塵・星間塵

小惑星や岩石などよりもずっと細かな、砂のような固体微粒子が宇宙空間には存在しています。惑星間空間にあるものを惑星間塵、星間空間にあるものを星間塵と呼びます。

注3  重力波

アインシュタインが一般相対性理論に基づいて約百年前に予言したもので、重力の本質である4次元時空のわずかな歪みが、光速の波となって伝わる現象。2015年に、ブラックホール同士の合体による重力波が初めて検出された。

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【プレスリリース】
小惑星リュウグウに核酸塩基とビタミンが存在!
~生命誕生前の分子進化と生命の起源解明に期待~

共同プレスリリース
橘 省吾(宇宙惑星科学機構 教授/JAXA宇宙科学研究所 特任教授)

北海道大学低温科学研究所の大場康弘准教授、海洋研究開発機構の高野淑識上席研究員(慶應義塾大学先端生命科学研究所特任准教授)、九州大学大学院理学研究院の奈良岡浩教授らの国際共同研究グループは、小惑星探査機「はやぶさ2」によって持ち帰られた小惑星リュウグウの粒子から、全ての地球生命のRNAに含まれる核酸塩基、ウラシルの検出に成功しました。さらに同一サンプルから、生命の代謝に関する重要な補酵素の一つ、ビタミンB3(ナイアシン)も検出しました。

2020年12月に小惑星探査機「はやぶさ2」によって小惑星「リュウグウ」試料が地球に届けられ、世界で初めて炭素質小惑星で直接採取された試料が実験室で分析されるようになりました(2022年2月10日付、Science誌で発表)。初期分析サブチームの一つ、可溶性有機分子分析チームではこれまでに、アミノ酸やカルボン酸など、種々の有機化合物がリュウグウ試料中に存在することを明らかにしてきました(2023年2月24日付、Science誌で発表)。本研究では、窒素を含む環状有機化合物(窒素複素環化合物)にターゲットを絞り、それらのリュウグウ試料中での存在を詳細に検証しました。

本研究チームが独自に開発した超高感度分析手法により、10ミリグラムほどのリュウグウ試料からすべての地球生命のRNAに含まれる核酸塩基の一つであるウラシルと、生命の代謝に不可欠な補酵素の一つであるビタミンB3(ナイアシン)を検出することに成功しました。これらの検出は、有機分子の化学進化の実像を示しており、生命誕生前の原始地球上でどのように最初の生命が誕生したのか、という科学における究極の謎について、炭素質隕石(=小惑星の破片)などの地球外物質によって供給された成分がその材料となったという説を強く支持するものです。

なお、本研究成果は、2023年3月22日(水)公開のNature Communications誌にオンライン掲載されました。

https://www.hokudai.ac.jp/news/2023/03/post-1197.html

詳細については、以下をご参照ください。

小惑星探査機はやぶさ2がリュウグウでウラシルとビタミンを含むサンプルを採取するイメージ図(NASA Goddard/JAXA/Dan Gallagher)

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【プレスリリース】
炭素質小惑星(162173)リュウグウの試料中の可溶性有機分子

共同プレスリリース
橘 省吾教授、杉田 精司教授、諸田 智克准教授、古屋 静萌特任専門職員

「はやぶさ2」が持ち帰った小惑星リュウグウ試料を主に溶媒で抽出することにより、含まれる可溶性有機分子を分析した。リュウグウは小惑星帯で最も多いC型小惑星に属する暗い始原的な小惑星で、炭素質コンドライト隕石のような含水鉱物に富んでいる。始原的な炭素質コンドライトにはアミノ酸を含む様々な可溶性有機分子が存在することが知られており、生命の誕生につながる前生物的有機分子を初期の地球や他の天体に供給した可能性がある。本研究では1回目のタッチダウンサンプリングで得られたリュウグウ表面試料に含まれる有機分子を日米欧の研究チームで分析を行った。その結果、アミノ酸やアミン、カルボン酸、芳香族炭化水素、含窒素環状化合物など種々の有機分子が検出された。これらの有機分子はリュウグウ表面から放出されて他の天体に運ばれる可能性もあるし、有機資源としても利用できるかもしれない。

https://www.jaxa.jp/press/2023/02/20230224-1_j.html

詳細については、以下をご参照ください。

© JAXA, University of Tokyo, Kochi University, Rikkyo University, Nagoya University, Chiba Institute of Technology, Meiji University, University of Aizu, AIST, NASA, Dan Gallagher. 図:小惑星リュウグウの表面試料から見つかった有機分子の概念図

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【プレスリリース】
小惑星リュウグウ試料中の黒い固体有機物

共同プレスリリース
橘 省吾教授、奥村 大河助教、高橋 嘉夫教授、杉田 精司教授、諸田 智克准教授、古屋 静萌特任専門職員

広島大学先進理工系科学研究科薮田ひかる教授が率いる固体有機物分析チームは、小惑星探査機「はやぶさ2」が地球に持ち帰った小惑星リュウグウ試料中の固体有機物の化学組成、同位体組成、形態を分析しました。小惑星リュウグウ試料(200-900μmサイズの微粒子37個)をさまざまな顕微分光法で非破壊分析した結果、試料中の有機物を構成する化学結合の種類と割合は、最も始源的なイブナ型炭素質コンドライト隕石(CIグループ)や始原的なミゲイ型炭素質コンドライト隕石(CMグループ)のものに似ていることが明らかとなりました。それらを電子顕微鏡で観察したところ、ナノメートルサイズの球状有機物や薄く広がった不定形の有機物が、層状ケイ酸塩や炭酸塩に隣接した、あるいは混じり合った状態が見出されました。リュウグウの母天体中で生じた二次鉱物との共存状態は、これらの有機物もまた母天体で液体の水と反応して生じた証拠です。リュウグウ試料の有機物には、グラファイトのような秩序だった構造は見られなかったことから、分析したリュウグウ試料の有機物は母天体内部や天体衝突によって高温で加熱されなかったことを意味します。

また、小惑星リュウグウ試料の同位体組成を測定した結果、重水素と窒素15が濃集している領域が検出されました。このような同位体組成は地球上の有機物には見られない、数十ケルビン(マイナス200℃以下)の低温環境でのみ生じることがわかっています。したがって、分析したリュウグウの有機物はたしかに地球外起源であることが示されたと共に、これらの少なくとも一部の有機物は星間分子雲や原始惑星系円盤外側などの極低温環境で形成されたことが示されました。詳細はこちらから。

https://www.jaxa.jp/press/2023/02/20230224-2_j.html

詳細については、以下をご参照ください。

図:リュウグウの進化に伴う、固体有機物の形成と進化。Credit: Yabuta et al. 2023を改変

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