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Update: 2017年4月17日

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Author: utops

実験室で調整が進む中間赤外線装置MIMIZUKU

TAO6.5m望遠鏡用中間赤外線観測装置 MIMIZUKUの開発

教授 宮田隆志 (理学系研究科 天文学専攻)
助教 酒向重行 (理学系研究科 天文学専攻)
特任研究員 上塚貴史 (理学系研究科 天文学専攻)
特任研究員 大澤亮  (理学系研究科 天文学専攻)
博士2年生 内山允史 (理学系研究科 天文学専攻)
博士1年生 森 智宏 (理学系研究科 天文学専攻)
修士2年生 山口順平 (理学系研究科 天文学専攻)
修士1年生 吉田泰  (理学系研究科 天文学専攻)

 

我々のグループではTAO6.5m望遠鏡用の中間赤外線観測装置MIMIZUKUの開発を進めている(Kamizuka+2016)。これは2-38μmという広い波長範囲をカバーする装置であり、特に26-38μmの長中間赤外線は地上ではこの装置だけが観測できる波長である。また2視野合成システムを搭載することで高精度のモニタリング観測も実現する(Uchiyama+2016)。

 

赤外線波長における大気透過率。TAOは中間赤外線で特に高い透過率を誇っており、特に26-38μmはTAOだけが観測可能である。

MIMIZUKUの観測対象

MIMIZUKUの観測波長である中間赤外線は50-1500Kの領域をよくトレースし、また固体起因のスペクトルフィーチャーが多数存在することから、宇宙のダストを研究するのに適している。我々はこのダストの観測を軸に、星惑星系形成、恒星進化、超新星などの現象解明に取り組む。具体的には以下のような観測研究を実施予定である。

1)地球型惑星形成を担うジャイアントインパクト現象の解明

地球のような惑星がどうやって形成されたかは現代天文学最大の関心事の一つである。理論的にはジャイアントインパクトと呼ばれる大規模衝突現象が形成時に起きたとされているが、系外惑星系で観測された例はなく、いつ、どこで、どのぐらいの数起こるかは観測的に捕えられていない。MIMIZUKUの広い波長カバレッジと高解像力、またモニタ能力はジャイアントインパクトによるダスト分布や放射の時間変動を調べるのに最適である。観測を通じて統計的な議論を行い、太陽系惑星の形成に迫る。

2)大小マゼラン雲観測による宇宙のダスト供給問題の解明

銀河をあまねく満たすダストがどのような天体から供給されているかは宇宙の物質進化に残された最大の謎である。これを明らかにするには銀河全体を見渡しながら個々の星を分解できるマゼラン雲がよい研究対象となる。マゼラン雲のダスト供給星の観測は衛星望遠鏡を中心にこれまでも精力的に行われてきているが、中間赤外線での空間解像度が不足しているため個別天体の対応を取ることが難しかった。またダスト供給星は基本的に変光を伴うが、スナップショット的な観測しかなされておらず、これが天体分類を難しくしていた。MIMIZUKUは30μmで1.2秒角という従来の10倍近い解像度を持ち、また長期にわたるモニタ観測も可能である。この能力によってダスト供給天体、特にダストに深く埋もれた星(Dustiest Stars)をくわしく観測し、宇宙のダスト供給問題を解明したい。

3)晩期型星でのダスト形成過程の解明

ダストの形成についてはその素過程も良く理解されているわけではない。特に晩期型星ではダスト形成が星風を駆動しひいては進化最末期の進化過程を決めると考えられており、星周空間でのダスト形成の理解は恒星進化を総合的に理解するうえで必須である。このようなダスト形成は星半径の数倍から数十倍で起きるため、近から中間赤外線の観測が重要となる。またダストを供給する天体の多くは変光星であるため、時間的なモニタリング観測が本質的に重要である。MIMIZUKUの広い波長カバレッジは、光球から分子領域、ダスト形成領域を含めた広い領域を見るのに最適であり、その高いモニタリング能力は、星の変光がダスト形成へとどのように伝播していくかを見るうえで有効である。近傍の晩期型星を中心としたダスト供給星の継続観測によってダスト形成の素過程に迫りたい。

4)太陽系内天体のモニタリング観測

太陽系内天体は系外に比べると格段に精密な観測測定が可能であるため、惑星系形成を考えるうえで興味深い研究対象である。これら天体の研究は探査機などで精力的に行われているが、周期的・突発的にその姿を変えるため、モニタリング観測との併用が本質的に重要となる。MIMIZUKUは中間赤外線装置の中では広い(2分角)視野を持っており、またモニタリングや突発天体への対応も可能であるため、太陽系内天体の観測においても重要な役割を果たす。具合的には木星の磁気圏やイオ火山の観測、金星大気、彗星アウトバースト、含水鉱物小惑星などが主な観測対象となる。

MIMIZUKUの開発

MIMIZUKUは2017/3現在、三鷹キャンパスの実験室で組立調整が進められている。おおよそのシステムはほぼ完成しており、今後検出器を含めた総合試験を実施する。その後国立天文台ハワイ観測所に輸送し、すばる望遠鏡を用いた機能試験観測に臨む。TAO望遠鏡には2019年ごろ輸送し、科学観測を実施する計画である。

将来に向けた技術開発

MIMIZUKUでは30μm帯の観測を実現するため様々な新規技術が用いられている。波長選択フィルターとしては従来の干渉フィルターに代わり金属薄膜を用いたメタルメッシュフィルターを開発し利用(Sako+2012)しており、またレンズの反射防止コートにはモスアイと呼ばれる構造を用いている(Imada+2012, Kamizuka+2014)。また高速視野切替を実現するための低温振動鏡の開発も進められている(Mori+2016)。これらの技術は将来の超大型望遠鏡用観測装置や、衛星搭載観測装置にも適用可能なものであり、TMT/MICHIチームやSPICA/SMIチームなどとも連携を持ちながら、技術の開発・蓄積を進めている。

開発した31μmバンドバスメッシュフィルター。中央の8角形の部分がフィルター部であり、開口は25mm。メッシュ部分は2μm厚のSiCに金コートがなされており、16μmの十字穴が前面にあいている。

(参考文献)
Imada, H., et. al., Proc.SPIE, 8450, 2 (2012)
Kamizuka, T., et al., Proc. SPIE, 9151, 5 (2014)
Kamizuka, T., et al., Proc. SPIE, 9908, 3 (2016)
Mori, K., et al., Proc. SPIE, 9912, 18 (2016)
Sako, S., et al., Proc.SPIE, 8450, 3 (2012)
Uchiyama, M., et al., Proc.SPIE, 9151, 43 (2014)
Uchiyama, S.M., et. al., Proc. SPIE, 9912, 5 (2016)

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