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Update: 2017年3月24日

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Author: utops

図1 金星探査機あかつきに搭載されている熱赤外カメラで撮影した金星。
明るいところは雲の温度が高く、暗いところは温度が低い。(画像提供: JAXA)

 

惑星大気探査

教授 今村剛(新領域創成科学研究科 複雑理工学専攻)

 

私たちは地球という惑星の大気圏の底で暮らしています。大気圏のエネルギーと物質の循環は、惑星の環境形成の要であり、生命圏の成立を左右します。当研究室では、宇宙探査と理論研究を両輪として、惑星大気の物理学を中心に惑星の環境形成のメカニズムを追求しています。以下のような研究プロジェクトが進行中です。

 

金星大気・火星大気の探査

惑星大気の構造は、重力に束縛され惑星の自転の影響を受ける流体のダイナミックな振る舞いと、開放系としての宇宙空間・惑星内部との物質交換の帰結としての、ある動的平衡状態とみなすことができます。ここに関わる物理過程は十分に把握されておらず、観測による実態把握が欠かせません。私が開発段階から関わってきた金星探査機あかつきは、2015年12月に金星に到着して金星の気象衛星となりました。金星は地球とほぼ同じ大きさの地球型惑星でありながら高温高圧の二酸化炭素大気と硫酸の雲をまとっています。あかつきは赤外線から紫外線まで多波長で撮影する5台のカメラを用いて大気中の巨大な波や渦の時間変化をとらえ、時速400 kmの高速大気循環がなぜ生じるのか、金星全体をおおう硫酸の雲がどう作られるのかを調べています。先進の光学センサにより、雲の高度に南北1万キロにわたって伸びる巨大な構造を見つけるなど、常識を越えた発見が次々ともたらされています(図1)。

また、2020年代の実現を目指してJAXAで検討中の火星衛星探査計画に参加し、火星大気の探査を目指しています。水が凝結と蒸発を繰り返しながら大気と地面の間で循環するしくみや、細かな塵が地面から巻き上げられて濁った大気が生じるしくみを調べ、火星のような寒冷な地球型惑星の気候システムの理解につなげます。このような惑星探査によって旧い理解を刷新し、新たな研究の枠組みを作っていきます。

 

電波掩蔽観測による太陽系天体の研究

電波掩蔽(えんぺい)観測とは、宇宙探査機が地球から見て惑星の背後に隠れるときと再び現れるときに、探査機と地上局を結ぶ電波がその惑星の大気をかすめることを利用して、そのときの電波の周波数や強度のゆらぎから惑星大気の構造を導出する研究手法です。当研究室はこの手法による太陽系天体の研究を牽引しています。金星探査機あかつきの電波掩蔽観測では金星大気の層構造を調べ、雲層の下、内部、その上の大気の相互作用が明らかになりつつあります(図2)。また、惑星の大気に加え、太陽を取り巻く高温ガス(コロナ)の構造と変動をこの手法で調べています。2011年に実施した太陽コロナ観測からは、コロナを100万度まで加熱する電磁流体波動の手がかりが得られました。2016年にはさらに進んだ観測を行い、データの分析が進行中です。

図2 当研究室が指揮して実施した金星の電波掩蔽観測によって得られた気温の高度分布を重ねたもの

 

 

数値理論モデルによる統一的理解

探査により得られた知見をもとに、数値シミュレーションで惑星大気の変動と構造形成を再現して、一見ばらばらで多様な惑星大気に通底する物理メカニズムを明らかにします(図3,4)。このことにより、地球を対象としてきた気象学・大気科学は惑星大気一般に適用できる汎用的な物理学となり、地球をはじめとする惑星たちがいま私たちが見るような姿でなくてはならない必然性を理解することにつながります。

図3 金星探査機あかつきで発見された雲頂の巨大な弓状構造を当研究室で数値シミュレーションにより再現したもの。×印で示された場所の直下に山岳があり、これが大気中に波を立てている。

図4 火星の地表付近で生じる対流によって波動が励起され上層大気に伝搬する様子の数値シミュレーション。ある瞬間の上下流速(上図)と温度変動(下図)の水平-高度断面を示す。このような波がNASAの火星探査機MAVENにより観測された。

 

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